研究課題/領域番号 |
18023028
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
植田 弘師 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
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研究分担者 |
井上 誠 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 講師 (60380987)
藤田 亮介 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (70380855)
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キーワード | ストレス性精神疾患 / 神経ステロイド / ナノメディシン / HPA axis / グルココルチコイド / WGA / MAP2 / tubulin |
研究概要 |
ストレス性精神疾患は現代病とも言える精神疾患である。その原因はストレスによるHPA(視床下部-下垂体-副腎)axisの変調がグルココルチコイドの産生を増加させ、これによって神経細胞死が誘導される事である。最近では、細胞死を伴わない神経回路網変調も疾患原因の一端を担っている事が示唆されている。そこで本研究ではストレス性精神疾患の新たな治療戦略を提示すべく、1)ストレス負荷時の精神機能に関与する神経回路網の可視化及び2)樹状突起並びスパインの可動制御によるナノメディシンの基礎的研究を行った。神経回路網の可視化を行うに当たり、WGAトランスジーン法を導入し、まず培養海馬神経細胞における回路網の構築とその変調を検討した。WGA-EGFP融合蛋白質発現ベクターのみでは、WGAが二次神経以降に輸送されたか否かを経時的検討が困難であった事から、同ベクターにCMVプロモーター制御のDs-Red2遺伝子を導入し、一次神経ではEGFPおよびDs-Red2の蛍光を発し、二次神経以降はEGFPの蛍光のみを発するシステムを構築した。これを用い、本蛋白質が経シナプス的に輸送される事を明らかにした。一方、動物個体における神経回路網の可視化を行うため作製していた、Cre制御WGA発現トランスジェニックマウスが完成し、さらに、Cre導入部位を同定するためCreリコンビナーゼ発現ベクターに蛍光蛋白質遺伝子を導入したプラスミドも完成し、両者を用いた解析を順次行っていく予定である。樹状突起の可動制御機構の解明では、これまでに神経ステロイドの一群がMAP2に結合する事で、Tubulin重合を制御する事を試験管内再構成実験により見出していた。今回、ストレス時において血中濃度が上昇するコルチコステロン(Cort)が、MAP2を介してTubulin重合に抑制的に作用する事を見出した。この活性は、ストレス時に血中で測定されるCortの濃度と同程度で認められた。一方でプロゲステロン(PROG)はCort同様MAP2結合するが、Cortによるtubulin重合抑制に阻害的に働いた。PROGによる阻害効果は、海馬培養細胞に対するCortの樹状突起退縮作用に対しても観察された。
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