研究概要 |
最近、私達は神経変性疾患の有棘赤血球舞踏病(chorea acanthocytosis : ChAc)の病因遺伝子VPS13Aの発見に成功した(Nat.Genet,28,121-122,2001)。ヒトChAc症例数は少なく臨床研究には限界があるため、遺伝子改変モデルマウスの作成を試み、最近成功した(J.Neurochem.92,759-766,2005)。今回、私達はVPS13A遺伝子産物choreinに対する抗体を作成し、choreinの臓器・細胞内分布を検討した。Choreinは精巣、腎臓、筋肉、脳に豊富に存在し、細胞特異的な分布をしていた。すなわち、精巣では精子細胞とセルトリ細胞、腎臓では近位尿細管上皮、脳においては広く分布するものの神経細胞に特異的に分布していた。(Biochem.Biophys.Res.Comm.353,431-435,2007)。さらに、上記のChAcモデルマウスを用いて、病変部位である線条体における遺伝子発現状態を検討し、gephyrinが有意に発現上昇している事実をウェスタンブロット法および免疫組織化学的に明らかにし、gephyrinがその凝集を支えるGABAA受容体もまた発現上昇をしていることを明らかにした。これは、同様の線条体におけるGABAニューロンの神経変性を引き起こすハンチントン病で報告された事実とは異なっており、代償性のupregulation以外に病態と関わる機構の存在が予想された(Biochem.Biophys.Res.Comm.351,438-442,2006)。また、VPS13A遺伝子のmRNAには、脳特異的なバリアントが存在することを明らかにした。Biochem.Biophys.Res.Comm.353,902-907,2007)
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