研究概要 |
1.安定同立体標識Aβ(1-40)と糖脂質との相互作用解析 大腸菌による大量発現を行ったAβ(1-40)を調製して、糖脂質GM1との相互作用解析を試みた。GM1ミセルとAβ(1-40)の複合体は分子サイズが大きく、通常のNMR測定ではシグナルを観測することが困難であるが、Aβ(1-40)の非交換性の水素を重水素に置換すること、また超高磁場920MHz NMR装置を用いたTROSY測定を行うことにより、GM1ミセルに結合したAβ(1-40)由来のNMRシグナルを捉えることに成功した。 2.超高磁場NMR装置を利用したリン酸化α-synucleinの動的構造解析 安定同位体標識を施したリン酸化α-synucleinを調製し、超高磁場NMR装置を利用した解析を行った。その結果、C末端近傍に位置するSer129のリン酸化に伴い、一次構造上でその周辺に位置するアミノ酸残基に由来するNMRシグナルのみならず、そこから離れた部位(Lys34,Lys45)に由来するシグナルにも化学シフト変化が観測された。この結果から、α-synucleinでは、そのC末端近傍が分子中央部と相互作用することが示唆された。 3.Ataxin-3とdi-ubiuitlnとの相互作用解析 マシャド・ジョセフ病の原因遺伝子産物・ataxin-3のJosephinドメインの脱ユビキチン活性の発現メカニズムを明らかとするため、Lys48結合型di-ubiquitinとJosephinドメインとの相互作用解析をNMRにより行った。その結果、Josephinドメインはdi-ubiquitinのイソペプチド結合を囲む疎水性表面と相互作用することが判明した。また、近位ユビキチンのC末端部位はJosephinドメインの触媒残基近傍に位置することが明らかとなった。これらの結果から、Josephinドメインはendo型の脱ユビキチン活性を有していると考えられる。
|