研究概要 |
行動学的解析(3-chamber social test, Barns maze task, Rotarod test, Ultrasonic vocalization, Contextual and cued fear conditioning, Elevated plus maze test, Porsolt forced swim test)の結果、父性重複マウスでは、社会性の障害、常同運動、固執傾向、超音波啼鳴の発達の遅れ、不安度の上昇等の行動異常が発見された。一方、母性重複マウスでは、野生型に比べて著明な変化を示さなかった。 父性重複マウスにおける行動異常のメカニズムを明らかにするために、その一つの候補として重複領域に存在するnon-coding RNA、特にMBII52に注目した。父性重複マウスのMBII52 mRNA量は、野生型に比べて約2倍の発現を示し、またセロトニン5-HT2c受容体のRNA editing比が上昇していた。初代培養神経系において、Fura2を用いて、セロトニン5-HT2c受容体特異的なアゴニストWAY161503による細胞内Ca濃度を測定したところ、父性重複マウス由来のニューロンでは、アゴニスト低濃度(100nM)で細胞内Ca濃度が優位に上昇した。これらの結果は、父性重複マウスにおいて、セロトニンシグナルの異常があることを示している。 以上の事から、本モデルマウスは、ヒト自閉症様行動を示し、その原因の一つとして、snoRNA(MBII52)がセロトニン5-HT2c受容体のRNA editingを変化させることによりセロトニンシグナルに変化をきたす可能性を明らかにした。
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