研究課題
本年度は、加齢に伴うタウの蓄積と脳機能障害との関係を調べることを目的とした。前脳領域特異的なCaMKIIプロモーター下で野生型ヒトタウ蛋白を過剰発現するTgマウスを作製し、行動実験・MRI・免疫組織化学の手法によりTgマウスの加齢に伴う脳機能の変化を解析した。Tgマウスは内在性タウの2-3倍の発現を示したが、組織学的な検討から、高齢になっても神経脱落と神経原線維変化は検出されなかった。このTgマウスは12ヶ月令では学習障害を示さなかったが老齢期(25ヶ月令)において運動機能非依存的なMorris water mazeによる場所(空間)学習課題における有意な障害が観察された。生存中に脳のどの部位に障害が起きているかを調べるため、機能的マンガン増強MRI法(神経活動に伴ったマンガンイオンの蓄積を利用した機能的MRI法)を用いてマウス脳活動の可視化を試みた。その結果Tgマウスにおいて嗅内野の神経活動と加齢による学習能力の低下が有意に相関することが示された。さらにこの嗅内野では可溶性の過剰リン酸化タウ蛋白が神経細胞内に蓄積し、シナプス数の減少を起こしていることがわかった。従って、神経原線維変化形成や神経脱落ではなくリン酸化タウ蛋白の蓄積が脳機能障害に関与する可能性が示唆された。これまでの、試験管内タウ凝集研究とあわせて考えると、微小管に結合しているタウは過剰リン酸化によって微小管からはずれ過剰リン酸かタウが細胞質で凝集体形成を始める。過剰リン酸化タウは線維状構造物を形成する前に多量体、顆粒状凝集隊を形成する。これら、2つの凝集体がシナプス減少に寄与している可能性が示唆された。
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