1.アミロイドワクチン療法による脳アミロイドの減少とミクログリア活性化の可視化 小動物用ポジトロン断層撮影装置(マイクロPET)とポジトロン核種標識アミロイドプローブ[^<11>C]Pittsburgh Compound-B(PIB)を用いて、アミロイド前駆体蛋白トランスジェニックマウス(APP23マウス)における脳アミロイド蓄積の加齢変化を可視化することに成功した。さらにAβワクチン療法の評価として、抗Aβ抗体を注入したAPP23マウス海馬におけるアミロイド減少を、[^<11>C]PIBにより経時的にモニタリングすることができた。その際に、活性化ミクログリアのPETプローブである[^<18>F]fluoroethyl-DAA1106を用いて、アミロイド減少と並行して抗体によるミクログリアの活性化をマイクロPET可視化し定量しえた。この結果、治療前のアミロイド量が多い個体ほど治療後のミクログリア活性化が強いことが明らかとなり、アミロイド蓄積量が多い場合はワクチン療法でミクログリアの過剰な活性化が起こりうることが示唆された。 2.抗アミロイド療法の神経原線維変化に対する効果の可視化 変異型タウ蛋白トランスジェニックマウス(P301Sマウス)におけるミクログリア活性化と神経変性の因果関係を検討した。MRIで脳萎縮が観察されるのが生後9ヶ月頃であるのに対して、ミクログリアプローブDAA1106で見出されるグリア活性化は生後3ヶ月前後に始まることが分かり、さらにミクログリア活性化を免疫抑制剤FK506により抑止したところ、神経変性も顕著に軽減されることが判明した(Neuron 2007)。このことより、ミクログリア活性化がタウ蛋白異常に基づく神経変性を加速することが明らかになり、アミロイドワクチン療法でミクログリアの過剰な活性化をきたした際の危険性が示唆された。
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