1.生体アミロイドイメージングのシグナルをもたらす分子種の同定 平成19年度は、これまでに確立した陽電子断層撮影(PET)による老人斑モデルマウス(アミロイド前駆体トランスジェニックマウス:APP Tgマウス)脳アミロイドイメージングにおける知見に基づき、AD患者に比してモデルマウスのアミロイドイメージングがなぜ困難であるのかを追究した。その結果、アミロイドβペプチド(Aβ)のN末端が切断されピログルタミル化されたAβN3pEがAD患者脳では多量に蓄積するのに対し、APP Tgマウスでは蓄積量がはるかに少なく、しかもアミロイドに対するPETプローブ([^<11>C]PIB)の結合部位はAβN3pEの蓄積部位ときわめてよく一致することが確認された。従って、PETプローブが認識する"AD患者型"アミロイドは、"APP Tgマウス型"アミロイドよりもAβN3pEの含有量が多く、このAβN3pEが増加するメカニズムを理解する際にPETイメージングが有用な指標をもたらし、AD発症機序解明や治療的制御に結びつくと考えられた。これら一連の研究に関する論文は、Journal of Neuroscienceに掲載された。 2.グリア細胞機能の指標となるイメージングバイオマーカーの探索 PETイメージングが可能な末梢性ベンゾジアゼピン受容体(PBR)が、神経細胞死が少ないAPP Tgマウスではアストロサイト主体で増加するのに対し、神経細胞死が顕著なタウTgではミクログリア主体で増加することが分かり、アストロサイトとミクログリアのPBRは、それぞれ神経保護的なグリア活動と神経傷害的なグリア活動を反映することが示唆された。このPBRの発現特性はADモデルマウスのみならず、様々な神経変性モデルでも当てはまり、PBRがミクログリアとアストロサイトのどちらで増加するかをあらかじめ各疾患の動物モデルで検証しておけば、その疾患の発症過程や治療過程でグリアがいかなる役割を持つのかが明らかになり、それを踏まえて生体でモニタリングが可能になると見込まれる。これらの研究に関する論文は現在投稿中である。
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