研究課題
過去2年間の解析によって、中世鎌倉人骨には解析可能な形でDNAが残されていることが証明されたので、今回の研究では、この人骨の解析に用いた方法を利用して、更に多くのサンプルの解析を行うことにした。これまで解析した中世鎌倉の集団墓地遺跡と由比ヶ浜南遺跡で得られた塩基配列データは、併せて考察すると、彼らの持つハプログループは現代日本人に類似していることが判明している。ところが双方の遺跡ではハプログループの頻度は異なっていた。その違いが解析個体数が少ないことによるバイアスなのか、あるいは本質的なものなのかを確認するために、今回は双方の遺跡で解析個体数を増やして考察を行った。前回の解析で14体を解析した集団墓地からは30サンプルを、19体の結果を得られた由比ヶ浜南遺跡からは7体をサンプリングした。サンプルは形態学的な研究に支障がないよう、最も情報量の少ない第3大臼歯を用い、あらかじめレプリカを作成してから粉砕し、DNAを抽出した。現在のところD-loopのHV1領域181塩基についての解析を進めており、研究は途中である。古人骨由来のDNA分析では、通常解析した個体間の血縁関係に関する解析と、集団間比較が行われる。今回分析のターゲットとしたのはミトコンドリアのDNAなので、父系の解析はできないが、解析集団がどの様な母系の血縁を持った人々から成立しているかは明らかとなる。またD-loopを用いた解析で集団内部の血縁関係の解析を行い、埋葬形態との比較を行うことによって社会構造を考察している。更にハプログループの頻度データをもとに、双方の遺跡の違いを検証する。双方は形態学的にも異なる傾向を持っていることが報告されており、その違いが遺伝的な差違に基づくものなのかを解明する。
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