研究概要 |
「なんてん」電波望遠鏡によるCO(J=1-0)スペクトルによる銀河面の広範な分子雲サーベイデータをもとに、「NANTEN2」を用いた450GHz帯および810GHz帯での分子、原子スペクトルによる観測研究を実施した。銀河系中心部の大質量星形成領域であるSgrB2領域、近傍の活発な星形成領域であるCarina、NGC3603、Rosette、RCW106、NGC6334の各領域をCO(4-3,7-6),CI(2-1,1-0)スペクトルでマッピング観測を行った。CO観測のデータを、励起モデル計算と合わせ、星形成に密接に関連した高密度分子雲コアの温度、密度を見積ったところ、若いOB型星からの紫外線放射により、高温、高密度になっていることが明らかになった。CI観測の結果は、CO観測と似た分布を示す領域がある一方で、COとCIの分布に違いが見られる領域もある等、単純なedge-on PDRでは説明ができず、clumpyモデルや化学進化モデルを取り入れた議論が必要である。今後、さらに観測領域、対象を広げ、十分なサンプルに基づき統計的に議論をすすめていくことで、大質量星形成領域での星間ガスの物理状態を解明していく。 装置開発においては、200GHz帯、345GHz帯の受信機開発をすすめ、とくにサイドバンドセパレート型受信機の開発に必要なLOカプラ等、立体回路の開発を進めた。高周波化をした際に、十分な精度で加工できるように、カプラ内の導波管内部の溝の形状やパターン等を改良した。受信機の実験室での評価を終え、雑音温度、サイドバンド分離度も、十分観測に使用できるレベルであることを確認した。今後、チリのNANTEN2望遠鏡に搭載、観測を開始する。
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