星間物質の大域的構造モデルの最大の問題は、銀河円盤から銀河ハローへと鉛直方向に向かうに従い、磁場や宇宙線のエネルギーが星間物質の熱エネルギーと運動エネルギーの総和より大きくなってしまうという、非熱的エネルギー過剰問題である。こういった星間物質構造は、磁気流体力学的不安定理論によるとパーカー不安定であるため、実現できない。物理学の観点からみても大問題である。逆に、この非熱的エネルギー過剰の矛盾を解決することにより、(1)星間物理学のバックボーンの構築及び、(2)銀河スケールでの磁気流体力学的不安定の発現に関して、本質的な理解を与えることになる。このような学問的背景のうえ、研究期間における本研究の具体的な達成目標は、(1)銀河円盤における星間物質の静水圧平衡モデルの構築、(2)星間物質の諸相の観測データの集積、(3)銀河円盤における重力場の再検討、(4)非熱的エネルギー過剰問題の解決の4つである。この一連の作業により、近年その必要性が高まっているにも関わらず1990年初頭でその進展がとまっている、銀河円盤における星間物質の大域的構造モデルを、より実証的な立場から新たに構築するのである。ただし、こういった一連の研究を行う際、特に宇宙線の起源を考察するためには、恒星の晩期進化を理解する必要に迫られる。このため、恒星の最終進化過程の理論モデルを検討していたところ、恒星からの質量放出史が惑星状星雲の形成と力学的進化に多大であるという研究上の副産物を得た。この研究は学術論文誌に公表済みである。
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