星は分子雲コアの重力収縮によって生まれる。分子雲コアは主に分子の回転輝線で観測されるので、コア内の分子組成は星形成過程を観測的に研究する上で重要である。例えば観測でよく用いられる一酸化炭素輝線は星形成前の高密度コア中心部で氷になることが我々の今までの研究から分かっている。本研究では1次元球対称重力収縮の輻射流体モデルに基づき、星形成過程における分子雲コアの分子組成進化について研究した。その結果、星形成前に氷になった一酸化炭素分子をはじめとする揮発性分子が、どの進化段階、領域で昇華するかを明らかにした。また原始星の誕生後、コアでは重元素分子同士のダスト表面反応が活発になり、蟻酸などの大型有機分子が生成されることが分かった。 また星の周りに形成される円盤について、その温度・密度分布等を求め、円盤からの水素分子輝線および一酸化炭素分子輝線の強度・強度比を求めた。その結果、中心星からの紫外線がある程度強い場合は、水素輝線強度比[2-1S(1)/1-0S(1)]が円盤内の微小ダスト存在量に依存することが分かった。一酸化炭素分子輝線については、輝線強度比から求めた温度が一酸化炭素の昇華温度よりも低い場合があることが、観測から指摘されている。我々は円盤のモデル計算から鉛直方向に比較的急な温度勾配があることに注目し、乱流拡散によって観測可能な量の一酸化炭素が凍結前に低温領域に運ばれることを示した。さらに一酸化炭素強度比から得られる温度は、円盤内のダストサイズ分布に依存し、最大ダストがサブミクロンサイズの場合よりもミリメータサイズの場合の方が低くなることを示した。
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