本年は二年計画の初年度であり、まずテラヘルツ分光システムの整備と分光計の到達感度の評価を中心に行った。最外層が真空引きされている三重構造のガラスセルを製作し、真空排気系および試料導入系と組み合わせた。セル内部に放電用電極を留置し、窒素ガスをはじめとする試料ガスの放電が安定に行われることを確認した。光源系は合衆国バージニアダイオード社製の周波数逓倍器で、増幅されたFバンド出力を2段の三逓倍器で1.4THz帯の出力を得る。つまり分光計の感度評価を160GHz前後、480GHz前後、そして1.4THz前後で行えることになる。本年度は実験の容易さの観点から160GHzおよび480GHzでの評価を優先的に実施した。到達感度の評価には硫化カルボニル同位体を用い、得られた吸収スペクトルの信号雑音比から見積もった。本システムでは測定周波数の掃引は標準信号源(周波数シンセサイザー)の発振周波数を変えることにより実現している。周波数の変更はステップ的に行うため、掃引時間と検出系の時定数等の設定の最適条件を探った。その結果160GHz帯および480GHz帯でのシステム到達感度として、それぞれ吸収係数換算で、8×10^<-8>cm^<-1>および3×10^<-8>cm^<-1>を得た(スペクトル掃引に30秒かけたものにっいての値)。検出器としてテラヘルツ帯に最大感度を持つものを使っているので、これらの値はおおよそ妥当なものと考えられた。テラヘルツ帯出力は480GHz帯出力と比べると大幅に小さくかつ大気の吸収量も多いため、伝播に伴う減衰を抑えるための効率の良い伝送系の設計と伝送経路中の大気を排除する仕組みの製作を進めている。
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