本年度は二年計画の最終年度である。1.1-1.7THzの領域に存在する大気の窓を全てカバーするテラヘルツ帯用三程倍器の整備が前年度までに完了したことを受け、平成19年度はその特性評価と分光応用を行った。本研究で最終的に目指している窒素原子イオンの微細構造遷移の存在する1.46THzを含む、1.3-1.5THzの領域で三程倍器の出力を調べたところ、1.5mの光路長の吸収セルを通過させたあとの検出器段階での出力で、およそ最大1μWであった。この値を基にすると、検出限界としては吸収係数に換算しておよそ1×10-7cm-1程度は期待できる。ただ、周波数帯によってはこのレベルの検出感度を期待できない領域もあるため、今後これらの諸条件について詳細を調査していく予定である。テラヘルツ帯に存在する大気の窓領域をカバーする分光計がひとまず完成したので、そのデモとしてアセトニトリルの回転スペクトル測定を行った。本研究により構築した分光計は、源振であるマイクロは領域のシンセサイザーを操作するだけでテラヘルツ帯の発振周波数を掃引することができる。非常に簡便に九州スペクトルの測定ができ、しかもその周波数信頼性は十分高いものであることがわかった。また、得られたアセトニトリルのスペクトルの信号雑音比から少なくとも10^<-6>cm^<-1>のレベルの感度を有していることが明らかになった。以上を踏まえ、現在水素付加水イオンやメチレンラジカルのテラヘルツ帯測定を進めており、これらの結果は構築した分光システムの紹介を兼ねて論文雑誌に投稿準備中である。窒素原子イオンについても効率的な生成を模索すると共に、その微細構造準位間の遷移測定に挑戦している。
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