充填スクッテルダイト超伝導体PrOs4Sb12は、Pr系で初めての重い電子超伝導体であり、比熱・中性子回折・熱伝導度・ミュウ中間子スピン共鳴実験、核四重極共鳴実験など様々な研究から、多バンド超伝導やスピン三重項超伝導などの可能性が示唆され、その超伝導発現機構に興味が持たれている。しかしながら、測定手段によって異なった超伝導特性が報告されるなど、混沌としている状況である。本年度は前年度の成果をもとに核スピン格子緩和時間の磁場・温度依存性を精度良く測定することで、重い電子形成のメカニズムと超伝導について微視的な観点から知見を得ることを目標とした。 核スピン格子緩和時間を、300mK〜30Kまでの温度範囲、磁場をOTから9.8テスラで測定した。緩和率の絶対値は磁場とともに迎えられる傾向があり、この振る舞いは前年度にえちれた超微細結合定数の磁場依存性によってうまく説明できることがわかった。一方、緩和率の温度依存性はスピン励起ギャップを連想させるような振る舞いを示し、磁場とともにギャップは大きくなる。これらのNMRから得られたパラメータの磁場依存性は、擬4重項の磁場による分裂と関係しており、準4重項の結晶場励起を介した重い電子状態が実現していると考えられる。この成果は現在論文として執筆中である。
|