研究概要 |
充填スクッテルダイト化合物ReT_4Pn_<12>(Re:希土類元素、T:遷移金属、Pn:プニクトゲン)は、Re、T、Pnの様々な組み合わせにより、多彩な物性を示す。現在,Ce系充填スクッテルダイト化合物の電子状態を微視的な立場から明らかにするために核磁気共鳴/核四重極共鳴(NMR/NQR)による研究を行っている。 近藤絶縁体的な振る舞いを示すCeOs_4Sb_<12>は低温で特異なスピン揺らぎを示すことが我々の行ったSb-NQRによる研究からわかっている。この物質に外部磁場による影響を見るために,様々な大きさの磁場中でSb-NMRを行った。結晶構造は立方晶であるが磁化率に異方性があるため単結晶を用いた場合と同様なスペクトルが観測された。Sb-NQRにより得られているパラメータを用いて解析を行い,スペクトルの同定を行った。これによって,正確な緩和時間T_1を求めることが出来るようになった。測定を行った結果,T_1は外部磁場によって急激に抑えられるが,15Tの強磁場下でも完全には抑えられない事がわかった。T_1と電気抵抗の振る舞いが類似していることから,絶縁体的に見えた電気抵抗の起源は状態密度にギャップが存在するというよりも,非常に強い磁気散乱にあると考えられる。今後,ナイトシフトの測定も併せてさらに研究を進めていく。 CeRu_4Sb_<12>は金属的な振る舞いを示すが,低温で非フェルミ液体的な振る舞いを示す物質である。この物質にゼロ磁場下にてSb-NQRを行った結果,緩和時間T_1の振る舞いはCeOs_4Sb_<12>と非常に似ていることが明らかになった。30K以下では顕著なスピン揺らぎが観測された。今後,希釈冷凍機温度まで測定を行って,この物質の性質を明らかにしたい。
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