当該研究では充填型スクッテルダイト構造を持つ物質についてのミュオンスピン回転・緩和法(μSR法)を用いた研究を行った。まずSmRu_4P_<12>では磁気八極子秩序の存在が提案されており、その磁気的状態がどのようなものであるかは大きな興味が持たれている。我々は以前見られていたように零磁場下、転移点以下で内部磁場が発生することを観測し、磁気双極子または磁気八極子の秩序状態にあることを確認した。さらに詳細な解析からこの内部磁場がT^α型の八極子モーメントによる可能性を提唱した。加えてこの八極子のダイナミクスに起因すると考えられる内部磁場の揺らぎを観測し、この揺らぎが極低温において抑制されることを見出した。次にPrFe_4P_<12>のナイトシフトの磁場印加角度依存性および温度依存性を詳細に測定し、NMR実験等から提唱されている電気十六極子の存在と矛盾のない結論を得たが、さらに詳細な検討が必要である。またPrOs_4Sb_<12>ではナイトシフトの磁場印加角度依存性の詳細な測定を行い、2回対称の変化をすることを観測した。これはミュオンの状態を知る大きな手がかりとなり、今後この結果に基づく定量的な解釈をしていくことが可能となる。さらに関連物質として、PrPb_3の研究を行い、ミュオンの位置に低温で大きな内部磁場が生じることを見出した。この内部磁場の大きさは特定の内部磁場の大きさの整数倍になるという、極めて得意な状態にあることを観測し、ミュオンと141Prの間のスピン結合、あるいはPrの八極子モーメントを考慮することで説明できるものと考えている。
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