研究概要 |
1)有機導体(DMET)_2X (X=I_3,CuCl_2)の磁気光学測定とその解析をおこなった。その結果,いずれの系でもこれまでの測定と矛盾しない擬一次元的フェルミ面に特有なPORが観測された。また,擬一次元系における伝導面内の詳細な角度依存性の測定と解析が,従来の第3角度効果による解析より擬一次元フェルミ面内異方性を評価するために非常に有効であることが明らかとなった。その結果,I_3塩の方がCuCl_2塩より高次のフェルミ面のワーピングを持つためフェルミ面のネスティングが困難となり,より高いFISDW転移磁場を持つことを初めて明らかにすることができ,FISDW転移磁場の半定量的な見積りをおこなった。 2)我々が開発した圧力セルの特徴は,セル本体にNiCrAlを使用し,ピストンに電磁波の透過が可能で強度があるジルコニアを採用することによって1.1GPaの圧力発生が可能となった。この圧力セルを用いて高圧下磁気光学測定をおこなった。最終的なねらいはα-(BEDT-TTF)_2I_3であるが,この系はゼロギャップ状態にするのに1GPa以上の圧力をようするので,同様に0.5GPa付近の圧力下でゼロギャップ状態になると考えられているα-(BETS)_2I_3で磁気光学測定を試みた。通常のサイクロトロン共鳴は周波数と磁場が比例する依存性を示すが,Dirac cone型のバンド構造では非線形な依存性が期待される。したがって,周波数と磁場の関係が非線形なサイクロトロン共鳴の依存性が観測されれば,Dirac cone型のバンド構造の存在を実験的に検証することが可能となる。α-(BETS)_2I_3単結晶をモザイク的にならべ,試料間を透過する電磁波を観測する方法で測定を試みた。しかし,圧力セルの内径が3mmと小さいため有効な電磁波との相互作用がとれないようで,まだサイクロトロン共鳴の観測には成功していない。今後試料の成長過程で出現する非常に薄膜な試料を用いて,直接透過測定の形で観測を試みることを計画している。
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