本研究では、新しい相転移物性の発現および相制御を目指したビフェロセン系電荷移動錯体の開発を主眼とする。 1.前年度までに作成した一価固体・二価固体の相境界図を踏まえて、境界に近い錯体の合成を重点的に行った。その結果、本研究の合成目標である、相境界近傍の一価錯体が3種類得られた。これらは温度変化では価数転移を起こさないことがわかったが、加圧による転移実現・伝導性変化が極めて有望である。この点については継続して検討をおこなっている。 2.本研究で得られたDA比1:2型の錯体のうち、価数相図の作成に用いた錯体は全て交互積層錯体であるが、分離積層構造を持つ錯体がほぼ同数得られた。それらの構造について整理した結果、ビフェロセン側の置換基サイズに応じてアクセプターどうしの重なりが変化することがわかった。即ちアクセプターカラムに電気伝導性を担わせるための分子修飾・構造設計に対する指針が得られた。
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