研究概要 |
本課題では、(R,R'-DCNQI)_2Mのナノ/マイクロサイズ単結晶をSiO_2/Si^<++>基板上で電極から直接成長させ、その基礎物性とデバイス特性を測定する。(DCNQI=dicyanoquinonediimine ; R,R'=methyl, chloro, bromo, iodo ; M=Ag, Cu, Li, Mg)今年度は主に(DMe-DCNQI)_2Agの単結晶について、(i)位置選択的結晶成長の検討、(ii)低温物性における結晶サイズ効果の計測、(iii)RRAM(抵抗変化型ランダムアクセスメモリ)動作の発見と詳細検討、を行った。 まず、結晶成長の位置選択性向上については、電気分解による結晶成長を試みた。すなわち、数ミクロン離した一対の対向電極間に電流を通じると、この電極間のみに結晶が成長してくることを確認した。現在、電流波形や電極形状による結晶成長様式の違いについて検討を重ねているところである。 次にサイズ効果の計測であるが、基板上結晶の抵抗率温度依存性を測定したところ、バルク結晶で見られるような170K〜300Kでの抵抗減少が見られず、室温から既に抵抗が上昇するという現象を観測した。その温度依存性をアレニウスプロットしたところ直線で良く近似できたことから、これは分子の二量化による電荷のギャップを観測していると推測される。 RRAM動作については、他の測定中偶然見いだしたものであるが、その特徴は整流作用と抵抗のON/OFFとが組み合わさったものであるということである。すなわち、金電極上に配置した(DMe-DCNQI)_2Agの単結晶を空気中で12時間放置すると、1V程度のバイアス電圧をかけても電流の流れない状態(OFF)が実現する。これに2〜3Vのバイアス電圧を印可すると、急に電流が流れる状態(ON)となり、しかもこの状態では負バイアスに対して電流を通じないことが明らかとなった。その発現機構について、詳細な動作様式をもとに現在考察中である。
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