研究概要 |
本年度は、バルク金属ガラス材に加え、RFマグネトロンスパッタ法を用いて作製した薄膜試料におけるイオン注入効果に注目した研究を進めるとともに、バルク試料におけるCo60ガンマ線照射効果および原子炉中性子照射効果について検討を行った。室温で作成したZrNiAlCu薄膜はX線回折ではリボン材と同様なブロードピークを示すが、SEMによる断面観察では柱状組織が確認された。試料面に垂直方向からAgイオンを1×10^<20>/m^2注入すると、より微細な組織へと変化する。二体衝突によるモンテカルロ計算では、薄膜構成原子と基板原子との双方で原子の混合が起こることが予想されるが、RBS分析によるとSi基板の場合にはSi原子の薄膜合金への流入はほとんどみられず、Zr,Ni,Cuなどの薄膜構成原子は反跳によって基板方向への混合が起きていることがわかった。また、薄膜へのイオン注入で現れる析出物は、照射量とともにサイズおよび数が変化する。Pイオン注入の場合は照射量が増加するにつれそのサイズが大きくなる一方で、数は減少する。金属ガラス試料の温度に対する電気伝導度曲線にはガラス転移および結晶化に対応すると考えられる温度で折れ曲が観測された。400kGyまでのガンマ線照射では結晶化に由来すると思われる変曲点の温度はほとんど変化しない。一方、ガラス転移によると思われる変曲点の温度は照射量とともに減少する傾向がみられ、ガンマ線照射により過冷却液体領域が広がることを示唆する結果が得られた。原子炉照射による高速中性子束2×10^<23>n/m^2までの照射をおこなった結果、500K以下の照射温度では金属ガラスの機械的特性に変化は見られないが、570K以上の照射温度になると、結晶化温度が低下し、ビッカース硬さおよびヤング率の増加が観測される。このような脆化現象は照射初期にはじまるが、照射量の増加に伴う著しい劣化は起こらないことが明らかとなった。
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