Zr_<65>Al_<7.5>Ni_<10>Cu_<17.5-x>Pd_x (x=0-17.5at%)合金の凝固相のAr雰囲気圧力(2×10^<-3>〜10^5Pa)依存性について調査した。ガラス形成能(GFA)の雰囲気圧力依存性は、Pd添加量によって大きく変化し、高Pd添加合金(x>5 at%)程、臨界ガラス形成直径の変化が大きいことが確認された。この現象は、合金組成の変化、圧力による融点変化および臨界核形成エネルギーの変化によって解釈できないことを確認した。鋳造凝固中の冷却曲線の雰囲気圧力依存性を直接測定し、これと連続冷却変態(CCT)曲線との関係に注目して、本合金系におけるGFAの低域圧力依存機構を考察した。T_g+160K (T_g:ガラス遷移温度)以下の温度範囲で冷却が鈍る現象がPd量および雰囲気圧力に依存せずに観察された。冷却中にこの温度域で過冷却液体(SCL)表面と鋳型表面の間に空間が形成・成長し、冷却速度が雰囲気ガス種・圧力に大きく依存することを、試料および鋳型表面粗さ観察等によって確認した。 一方、各合金のCCT図を実測した結果、低Pd (x<12.5 at%)合金は、SCL高温域にのみ変態曲線が存在するのに対し、高Pd (x【greater than or equal】12.5at%)合金では、準結晶に対応する変態曲線(ノーズ温度〜T_g+150K)が、T_g直上に存在することがわかった。よって、高Pd添加合金のみが、SCL低温度域での冷却挙動の変化にそのガラス形成を依存する機構が明らかになった。 冷却速度が雰囲気圧力に依存することを利用して、BMGの圧縮変形挙動の冷却速度依存性を調査した。冷却速度が大きい程、ヤング率は減少することがわかった。降伏応力もヤング率と同様に減少する結果、BMGの降伏歪(弾性限界で定義)は冷却速度に依存せず、ほぼ0.018であることが確認された。このことは、BMGの降伏歪(弾性限界)が試料の受けた熱履歴に依存しないことを示しており、BMGの変形・破壊挙動の本質を知る上で重要なヒントを与えると考えられる。一方、塑性歪には冷却速度の増加に伴って減少する傾向が確認され、未緩和ガラス状態が延性に有利であるといった従来の見解に一石を投じる実験結果を示した。
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