研究概要 |
[(Fe_<0.5>Co_<0.5>)_<0.75>Si_5B_<20>]_<96>Nb_4合金は銅鋳型鋳造法にて直径5mmの丸棒状バルクガラスが作製可能である.この直径は軟磁性金属ガラスの中で最大であるが,フラックス処理によって溶湯中に含まれる不純物や融体表面の不均一核生成サイトをフラックス処理によって除去し,同合金の本来のガラス形成能を評価した結果,直径7.7mmのガラス単相試料の作製に成功した.磁気特性は試料を大型化して尚,1.13Tの飽和磁束密度と20A/m以下の保磁力を示した. Fe-Si-B合金は1.5-1.7T程度の高い飽和磁束密度を有しFe-Si-B軟磁性アモルファス材料として知られる.これにPを添加したFe-Si-(B, P)合金において,広い組成領域で典型的なアモルファス構造となるが,BとPが添加された4元系でのみ,ガラス遷移が確認できガラス合金となることがわかった.最大の過冷却液体領域が得られた組成はFe_<76>Si_9B_<10>P_5で52Kであり,この値は鉄-半金属系金属ガラス合金の中で最大である.銅鋳型鋳造法による丸棒状バルク試料の作製結果から,Fe_<76>Si_9B_<10>P_5合金では直径2.5mmのバルク体としてもガラス単相を生成することがわかった.従来の報告ではFe-半金属のみで構成される非晶質合金群において得られた最大厚さは0.5mm,(Fe, Co, Ni)-半金属系においても1.2mmが限界とされており,バルク形成能の観点からみると大きな進展であると言える.磁気特性についても約1.5Tの飽和磁束密度,0.8A/m程度の保磁力を示すことから,高飽和磁束密度と軟磁気特性をあわせ持つ新しいバルクガラス合金であると言える.
|