研究概要 |
研究協力者である才田淳治(東北大学)・西山信行(RIMCOF)から試料の提供を受け,Zr-Al-Ni-CuおよびPd-Cu-Ni-Pバルク金属ガラス合金の動的剪断弾性率を,サブレゾナンス強制振動型力学スペクトロメターを用いて測定した.温度範囲は室温から熱的ガラス転移温度(それぞれ約400℃,300℃)まで,振動数範囲は10^<-3>Hzから10^<+1>Hzである.動的弾性率のin-phase成分とout-of-phase成分から固体としての通常の剪断弾性率と見かけの粘性率を求めた.粘性率の絶対値を低い振動数に外挿すると,多くのガラス物質と同様に熱的ガラス転移温度でおよそ10^<12>Pa sとなることを見いだした.Zr-Al-Ni-Cu合金において,一定温度で振動数の関数として動的剪断弾性率を測定し,高い振動数では固体的に,低い振動数では液体的に振る舞う動的ガラス転移を観測した.そのカイネティクスを解析し,活性化パラメタを評価した.活性化エネルギーの値は約6eV,振動数因子の値は10^<40> s^<-1>という異常に大きな値となった.これらの値は動的ガラス転移を律速している過程に複数個の原子が関わっていることを示唆している.Pd-Cu-Ni-P合金ではガラス転移温度よりもかなり低い温度領域で高分子ガラスにおいて見られるβ緩和が観測され,Zr-Al-Ni-Cu合金では観測されないことがわかった.平成19年度はPd-Cu-Ni-P合金におけるβ緩和を詳細に調べる計画である.
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