研究概要 |
歯科用チタン合金接合用のろう材として,金属ガラスの応用を試みた。赤外線ろう接法による金属ガラス(Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>)とチタン合金(Ti-6Al-7Nb)の突き合わせ接合材を作製し,機械的性質(引張試験,微小硬度計測定),耐食性(人工唾液中における浸漬試験),接合組織観察(マイクロビームX-線ラウエ解析,界面電子顕微鏡観察)により,接合性を評価した。主な結果は次の通りである。(1)歯科用赤外線ろう接装置の雰囲気制御ならびに冷却速度向上を目的とした改善により,その接合性が大幅に向上した。(2)引張試験では大きな接合強度が得られた。しかし,ばらつきが大きい欠点が認められた。破断はろう材内部の界面近傍で起こっていた。(3)ナノインデンター測定では硬さの大きい界面反応層を確認した。場所によるばらつきが大きかった。ばらつきは界面近傍の結晶化や界面反応層の肥大化によるものであった。(4)310Kにおける人工唾液中では非常に良好な耐食性を示した。(5)界面付近の金属組織はmaple-leaf状結晶粒と包晶で形成されており,X線回折構造解析により,それぞれ六方晶と正方晶であることが同定された。(6)界面の透過型電子顕微鏡観察によれば,ガラス相とナノサイズ結晶相が混在する数ミクロン厚の反応層が形成されており,それは粒径ならびに結晶性が異なる複数の層から成り立っていた。
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