研究概要 |
金属ガラスは過冷却液体を凍結することによって達成される.したがって,その形成能は,液体の安定性と核生成頻度によって決定される.申請者は,材料開発において重要となる,電子構造,原子レベル,状態図,連続体のマルチスケールにわたる挙動をシミュレーションする計算手法の開発をおこなってきた.特に,過飽和固溶体からの第2相の析出においてキーとなる核生成の自由エネルギーを第一原理から計算する手法を開発した.本研究では,この手法を液固反応に応用し,過冷却液体からの核生成の自由エネルギー計算を目標に研究を進めている.今年度の研究で得られた知見をまとめる. (1)固体の自由エネルギーを精密に計算するフレンケル法を液体に適用することは可能である.しかし,気体から3重点を迂回するような経路で積分をする必要があり,単純なイジングモデルは使えず,計算が煩雑で,精度も落ちる. (2)エネルギー・体積曲線から自由エネルギーを予測する手法を模索した-金属ガラスで傾向が違うとされるZrとTiとの差は得られなかった.しかし,希薄固溶エンタルピーと半径,硬度の相関が判明し,液体の自由体積を含めて予測を進める予定である. (3)過冷却液体の安定性を,準安定平衡状態図から考えることが可能であることが判明した.準安定溶媒を用いた結晶成長をマルチスケールでシミュレーションすることで,過冷却液体での核生成,成長に関する原子レベルの挙動を研究する予定である.
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