液体と気体が接触する新しい反応場の構築を目指して種々のプラズマ源の開発を行った。マイクロプラズマの技術を利用して、大気圧下で着火したプラズマを液体と接触させることにより、プラズマ中の高エネルギー粒子(特に電子やラジカル)が、液体そのものや、液中溶解物へ化学反応を起こす新しい反応場の研究を目指している。主に、1)電極間距離分布型誘電体バリア電極構造による液体表面接触プラズマ、2)らせん電極構造による液中気泡内プラズマ、3)LFマイクロプラズマジェットによる液体接触プラズマ、の3つプラズマ源を用いて研究を進めた。1)、2)に関しては誘電体バリア電極と13.56MHzの高周波電源を用いてグロープラズマの生成に成功した。2)では液中を移動する希ガスからなる気泡内部でグロー状のプラズマを着火できるという成果をあげた。また、それぞれ液体に溶解した色素(メチレンブルー)の分解実験を行ったところ、指数関数的にその濃度が減少した。発光分光分析から、OHラジカルがこの反応に寄与していると推定される。また、3)のプラズマ源に関しては、単電極によるプラズマジェットの生成が可能であることを実験的に発見したのをきっかけに、未知であった放電機構を解明し、さらに幅広いパラメーターでプラズマを着火することが可能となった。このLFマイクロプラズマジェットは、温度的に非平衡なプラズマ源であり、ガス温度は室温程度であるので指で触れるにもかかわらず(安全試験は行っていないのでお勧めはしない)、空気中の酸素からオゾンを生成できるだけの反応性を有する高い電子温度を持っている。この希有な特徴を有するプラズマは液体接触プラズマ源として好適であり、液中金属イオンのプラズマ還元や、液状モノマーのプラズマ重合や、緑膿菌の殺菌と言った応用研究に着手し、それぞれ初歩的な結果が得られている。バッテリー駆動のハンディタイププラズマ源の開発にも成功した。
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