研究概要 |
我々は、環境にやさしい技術である超臨界流体技術およびパルスパワー技術を融合させ、新たなる反応場の構築を目的として昨年度に引き続いて本研究を遂行した。本年度は、高温高圧状態の水を反応場とした新規複合技術の創成を目指した。有機化合物の物質変換基礎の蓄積、熱安定性に優れた難分解性物質の簡便処理法の提案に焦点を絞り、フェノールをモデル化合物とした亜臨界水中でのプラズマ照射処理試験を実施した。また、比較のために常温常圧水中でのプラズマ照射処理、亜臨界水中での熱分解処理も検討し、本手法の優位性などの特長を明確化することを試みた。実験には内容積900mLのバッチ型高温高圧用プラズマ発生・反応装置を利用した。セル中の電極は、針-平板電極(電極間隔1〜10mm)とし、フェノール水溶液初期濃度0.01〜0.1mol/L、温度100〜250℃、圧力1〜20MPa、パルスプラズマ照射回数0〜4,000回(処理時間としては数分〜1時間程度)の条件下で実験を行った。分析はGC-MS、GC-FID、HPLC-UV/RIおよびTOCを用いた。 まず、フェノール水溶液の初期濃度0.lmol/Lとし、温度250℃、圧力20MPaにおいて、転化率に与えるパルスプラズマ照射回数の効果を調べた。その結果、未照射時のフェノール転化率約4%に対し、1,000回照射の段階で転化率は約10%に達した。しかし、照射回数を増大させても転化率は増大しなかった。また、他のパラメータの効果を調べたところ、フェノール初期濃度および温度が低いほどフェノール転化率が増大することを確認した。さらに、本手法と他手法を比較した結果、本手法でのフェノール分解は他手法の数倍速いこともわかった。分解反応機構については反応場におけるOHラジカル濃度が鍵であることは把握したものの、解明には至らなかった。今後は、反応メカニズム解明とともに連続処理システムの構築が課題である。
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