本研究計画の前半である平成18年度は、後半の研究目的の遂行のための実験装置の開発を行った。主な研究内容および成果は以下の2点である。 (1)電子増強ラマン分光法を用いた超臨界水中レーザー誘起プラズマ生成と分光計測 超臨界水中にピコ秒のパルスレーザーを集光照射し、マイクロプラズマを生成させるための光の波長やレーザーの強度やビーム径などの最適化を行った。その結果、超臨界水中に安定にマイクロプラズマを連続的に生成することに成功、分光測定のための条件を確立した。次に温度・圧力を変化させた場合の電子増強ラマンスペクトルの変化、プラズマ発光、特にその中に含まれる原子線などを解析した。その結果、超臨界水中のプラズマにおいて、電子の周囲にクラスタリングする水分子の数、及び環境を計測することに初めて成功した。また理論計算による信号の解析を行った。さらに次年度にむけて、顕微鏡下でのレーザーマイクロプラズマの発生実験に着手した。 (2)プラズマ・液体界面の分子環境探査に向けた時間分解偏光変調赤外吸収法の装置開発 励起IRビームの偏光を高速で変調することで2つの偏光信号を同時に取得する装置を開発した。等方媒質ならば、これらの変調信号は全く同じになるために同時測定をして差分をとるとキャンセルされるが、電極表面やプラズマ・液体界面など、等方性が破れる空間に存在する分子からの信号はキャンセルされず選択的に測定できる。平成18年度は直線偏光・円偏光両方の装置の開発に取り組み、両者ともテストサンプルで振動スペクトルを取得することに成功した。直線偏光では、電気二重層における水分子の環境測定、円偏光では実験結果を解析するための理論計算方法の最適化を行った。さらに次年度に向けてレーザー誘起プラズマだけでなく、高周波電源によるプラズマ生成方法と赤外分光器の組み合わせの検討を開始した。
|