研究課題
特定領域研究「水と生体分子」では水と生体分子の相互作用が中心テーマであり、水分子ネットワークはタンパク質のフォールディングやダイナミクスにも関与していると考えられ、基本的なタンパク質の周囲を取り巻く水分子のネットワークおよびそれと相互作用する水素結合の詳細を調べるため中性子回折実験を行うことにした。以下、今年度の成果をまとめて述べる。1)ウシRNaseAの中性子解析と活性部位の水和構造A Wlodawer et al.の結果が従来の酵素反応の機構とは異なる結果を出したのはPO4を含んだ構造に依るのではないかと考えて、PO4を含まない結晶構造解析を行ってみたが、結果はやはり同じでHis 12 のN〓はやはりプロトネーションしていた。しかし,その後の精密な解析でNtのプロトネーションの占有率は測定のpH(=5.8)では8%程度であり、2%のNtは脱プロトン化していることが判明した。これが酵素反応に寄与していると考えれば矛盾はなくなる。2)タンパク質の水素結合中性子解析では水素原子位置が決定されるので、水素結合を(X-H----Y)と表記し、水素原子を原点、HXを横軸の負の方向に取り、アクセプターYを探索し、プロットしてみた。その結果:1)Xとアクセプター、Yを結ぶ直線上に水素原子が乗る例は殆ど無い。2)水素とアクセプター結合距離(r)と水素結合角(θ1)の間には相関がある。タンパク質の水素結合は何故水素原子がドナーとアクセプターを結ぶ直線上に乗らないのか。タンパク質の水素結合の強度を示す一般的な表式はあるのか。その原因を解明する試みが現在進んでおり、新たなパラメータとして角HYZ(θ2)を導入するとr,θ1、θ2間に相関があり、アクセプターのYの孤立電子対方向がこれらの相関に関与していることが判明しつつある。
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