研究課題
蛋白質のフォールディングの異常が重篤な病気に関わることがわかってきた。中でも、狂牛病やクロイツフェルトヤコブ病で知られるプリオン病は、蛋白質の異常なコンフォーメーションが自己触媒的に増殖して感染していくという「蛋白質オンリー」な点でこれまでに知られている感染性の病気とまったく異なる。この「蛋白質オンリー」で自己増殖していく機構は蛋白質科学的に見てもこれまでの常識を覆すものであり、その分子機構の解明が望まれている。そこで本研究では、一個一個の正常型蛋白質が線維に取り込まれるようすやプリオンが細胞内で伝搬していくようすを「生きたまま」個別に観察することでプリオン現象を分子レベルで理解することを目的としている。これまでに、in vitro、in vivoの両面で進展があった。本年度の成果を以下に示す。1.1分子レベルでの研究:我々が開発した蛍光ラベルのSup35線維の実時間観察を発展させ、1分子レベルで線維成長を観察することを目的とした。まず、緑(OregonGreen488)でラベルしたSup35線維をガラス板に固定してから、赤(Cy3)でラベルしたSup35単量体(10nM程度)を加えて線維成長を実時間で観察した。2 1細胞レベルの研究細胞を用いた研究では、プリオンSup35とGFPの融合蛋白質を発現させた酵母細胞をモデルとした。プリオン凝集の動態を1細胞観察によって追跡した。その結果、fociは細胞の成長に伴って脱凝集して細胞質に拡散する、つまり、fociはダイナミックな性質を持つことを明らかにし、プリオンの実体は細胞質に拡散しているオリゴマーレベルの凝集であり、このオリゴマー凝集体が娘細胞に伝搬することが明らかとなった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (2件) 図書 (1件)
Journal of Biological Chemistry 282
ページ: 4076-4084
Genes to Cells 11
ページ: 1085-1096