研究課題
タンパク質を構成するアミノ酸残基の中でプロリン残基は、その直前の残基とのペプチド結合(X-Pro)に関して、トランスもシスも容易に取りうる点で特異な残基である。近年、このX-Proの構造異性化が、プロリン異性化酵素(PPIase)により制御され、様々な生理活性に活用されている事が明らかになってきた。ところが、PPIaseの機能に関しては、「そもそも、なぜX-Proの構造異性化機能をもつのか?」という基本問題に対してさえ明確に答えられないのが現状である。そこで、私は、PPIaseの酵素活性に注目し、基質結合部位に導入した網羅的変異を手がかりに、PPIaseが酵素活性を発現するのに必要な条件を解析してきた。その結果、PPIase活性の発現には側鎖の関与は必ずしも必要とされず、適当なサイズのポケットだけがあれば発現される機能であると推察するに至っれ。この推察を確かめるため、本研究では、PPIase活性を示さないタンパク質としてバルナーゼ用い、アミノ酸残基置換により人為的にポケットを作成し、PPIase活性の発現を調べた。その結果、Phe56Gly/Arg59Gly/His102Tyr/Tyr103Glyの四重変異により、ポケットを導入したバルナーゼは、野生型FKBPの約4%の活性を示すことがわかった。このようにして、適当なサイズのポケットが存在することがPPIase活性発現に必要十分であることが実際に確認された。そこで、これらの実験結果に基づき、新たにPPIase活性発現機構モデルを提案した。
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Protein Engineering, Design, and Selection 21
ページ: 83-89
Protein Science 16
ページ: 2618-2625
Protein Science (印刷中)