研究課題
最も普遍的に存在する分子シャペロンの1つであるスモールヒートショックプロテイン(sHsp)は常温では球状のオリゴマーとして存在するが、高温で解離し疎水表面を露出することにより分子シャペロン機能を発現する。本研究では、sHspが高温により解離するメカニズムとsHspが細胞内でどのように変性タンパク質の凝集を防いでいるか明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の成果を得た。示差熱量測定を用いて、sHspオリゴマー解離の解析を試みた。分裂酵母由来SpHsp16.0では、45℃から55℃において微弱なエンタルピー変化を観察することができた。一方、SpHsp15.8では、解離にともなう変化は確認できなかった。さらに、変性のエンタルピー変化も小さく、変性と同時に凝集が起きていると考えられる。この結果は、SpHsp15.8の高い疎水性を反映していると思われる。高温におけるsHspと変性タンパク質の複合体の状態を蛍光偏光法で研究を行った。SpHsp15.8とSpHsp16.0のオリゴマー状態を解析した実験では、いずれも温度の上昇に伴い偏光度が小さくなり、オリゴマーの解離が確認された。SpHsp16.0では温度上昇に伴い急激に偏光度が小さくなることから16量体から2量体への解離が示唆された。一方、SpHsp15.8は、偏光度が徐々に減少することから、オリゴマー構造が徐々に変化すると考えられる。さらに、変性タンパク質が存在する条件で蛍光ラベルしたsHspの偏光度を測定した。SpHsp16.0の偏光度は若干上昇したが、オリゴマー状態のときよりも値は小さかった。一方、SpHsp15.8では、偏光度はオリゴマーのときよりも大きくなった。以上の結果は、SpHsp16.0は解離した状態で変性タンパク質と相互作用しその凝集を防ぐが、SpHsp15.8はあまり解離せず、その中間状態で変性タンパク質と大きな複合体を形成する、ということが明らかになった。
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