• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2006 年度 実績報告書

水の代替物質トレハロースの作用機構から探る生体系における水の役割2

研究課題

研究課題/領域番号 18031012
研究機関東京工業大学

研究代表者

櫻井 実  東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 教授 (50162342)

キーワードトレハロース / 水 / 適合溶質 / DNA / FTIR / 分子動力学シミュレーション / ガラス状態 / DSC
研究概要

トレハロースは、水の代替物質して細胞内に産成される適合溶質であり、細胞膜や蛋白質を乾燥や凍結破壊から防ぐ役割をする。本研究では、実験及び理論計算を通して、この糖の作用機構に関し以下の成果を得た。
1.レハロースを蓄積することにより乾燥耐性を獲得した代表的生物としてネムリユスリカをとりあげ、水置換仮説とガラス化仮説のどちらのメカニズムが優位に働いているかを検証した。具体的には、乾燥した幼虫試料を直接FTIR法あるいはDSC法により測定した結果、ネムリユスリカの生命維持にはガラス化メカニズムが優位に働いていると結論した。
2.トレハロースが乾燥DNAの構造安定化にどのような効果をもつかを、FTIR実験とDSC測定から調べた。その結果、1ヌクレオチド対当り2分子のトレハロースを混合し乾燥させるとB型二重螺旋構造が保持されること、トレハロースはDNAのリン酸基に直接結合しているらしいこと、さらに乾燥したDNAとの混合物中でトレハロースはガラス化していることが判明した。以上より、DNAの熱安定性はトレハロースのガラス化と密接に関係していると結論した。
3.水置換仮説やガラス化仮説を原子レベルで検証するため、分子動力学シミュレーションを実行した。まず、リン脂質二重膜とトレハロースから成る系に対しシミュレーションを実行した結果、トレハロースはリン脂質極性基に直接水素結合すること、及び脂肪鎖の秩序パラメータはトレハロース濃度依存的に増大することが判明した。これにより、水置換仮説が実証できた。次に、ガラス状態のシミュレーションにより、ガラス化しやすく劣化し難いというトレハロース特有の性質が何に起因するのかを調べた。分子間水素結合数、平均二乗変位、自由体積及び糖のコンホメーション揺らぎなどの解析結果から、トレハロースは単一のコンホメーションをもつため、分子のパッキング密度が高くなりガラス転移点の上昇がもたらされると結論した。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2007 2006

すべて 雑誌論文 (6件)

  • [雑誌論文] Molecular Dynamics Study on the Interaction between Trehalose and Phospholipid Bilayer2007

    • 著者名/発表者名
      Takano, Y, Furuki, T., Sakurai, M.
    • 雑誌名

      Cryobiology and Cryotechnology (印刷中)

  • [雑誌論文] Molecular Dynamics Simulation on the Glassy states of Trehalose2007

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki, N., Furuki, T., Sakurai, M.
    • 雑誌名

      Cryobiology and Cryotechnology (印刷中)

  • [雑誌論文] Cellular States of Dried Polypedilum Vanderplanki as Studied by Temperature-controlled Fourier Transform Infrared Spectroscopy2007

    • 著者名/発表者名
      Furuki, T, Sakurai, M., Akao, K., Watanabe, M., Kikawada, T., Okuda
    • 雑誌名

      Cryobiology and Cryotechnology (印刷中)

  • [雑誌論文] DNA Persists in Double-Stranded Structure Even at Dry State2007

    • 著者名/発表者名
      Zhu, B., Furuki, T., Okuda, T., Sakurai, M.
    • 雑誌名

      Cryobiology and Cryotechnology (印刷中)

  • [雑誌論文] Thermodynamic functions of α,α-trehalose dihydrate and of α,β-trehalosemonohydrate at temperatures from 13 K to 300 K.2006

    • 著者名/発表者名
      Furuki, T., Abe, R., Kawaji, H., Atake, T., Sakurai, M.
    • 雑誌名

      J. Chem Thermodyn. 38

      ページ: 1612-1619

  • [雑誌論文] トレハロースの交差耐性効果2006

    • 著者名/発表者名
      櫻井実, 古木隆生
    • 雑誌名

      低温生物工学会誌 52

      ページ: 17-23

URL: 

公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi