研究課題/領域番号 |
18031017
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
笹井 理生 名古屋大学, 大学院工学研究科, 教授 (30178628)
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研究分担者 |
寺田 智樹 名古屋大学, 大学院工学研究科, 講師 (20420367)
千見寺 浄慈 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助手 (10420366)
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キーワード | 生物物理 / 蛋白質 / ナノバイオ / 分子モーター / 統計力学 |
研究概要 |
蛋白質の柔らかいダイナミクスの分子論研究のために、有効な粗視化モデルの開発が重要な課題として注目されている。本研究では、立体構造予測で成功を収めたフラグメントアセンブリ法を始めとして、フラグメント動力学法、多体Goモデル、統計力学モデルなどの粗視化モデルを開発し、その成果を総合して蛋白質の機能発現を扱う新しい分子理論を構築することを目指し、以下の結果を得た。 1.残基間の多体相互作用を粗視化して適切に扱うためには、蛋白質の水和を正しくモデル化する必要がある。そのための第1歩としてナノメートルサイズの疎水的溶質の水和を分子動力学計算により分析した。溶質の幾何学的配置に大きく依存して水分子が排除される乾き転移が観測され、蛋白質の構造変化によって蛋白質表面のナノメートルサイズ領域の水和が大きく変化する機構が示唆された。 2.フラグメント動力学法を用いて立体構造予測法を開発した。拡がった鎖から粗視化ポテンシャルにしたがって動力学計算を行い、フォールディングを模したシミュレーションによって標的構造を探索する方法の有効性を検証した。さらにこの方法を用いて立体構造予測コンテスト(CASP7)に参加した。Free Modeling部門の定量的評価では12位にランクされる成績であり、今後の予測法の改良のために必要な方向を明確にすることができた。 3.統計力学的モデルを用いて3状態転移を経て進むフォールディング過程を分析した。天然構造中の相互作用の不均一分布に起因するエネルギーランドスケープの特徴を正しく評価することにより、コンシステンシー原理に基づく理論が多くの蛋白質の3状態転移の特徴を説明することができることを示した。また、3状態転移と複数フォールディング経路を示す複雑な過程がその物理的起源を共通に持ち、統一的に理解できることを示した。 4.粗視化モデルによってアクトミオシンの動作機構を分析した。レバーアーム的な構造変化、アンフォールディング・フォールディングを伴う柔軟な構造変化、静電相互作用によるアクチン-ミオシン間の複合体形成など、複数のメカニズムが協調して、ミオシンのアクチンフィラメント上の滑り運動が実現されることを示した。1分子計測で観測されるすべり運動をシミュレーションにより残基レベルの詳細さで分析した。
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