研究課題/領域番号 |
18031018
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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研究分担者 |
三上 文三 京都大学, 農学研究科, 教授 (40135611)
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30273519)
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キーワード | 枯草菌 / X線結晶構造解析 / 植物細胞壁 / 侵入・感染機構 / 不飽和ガラクツロニルヒドロラーゼ / ラムノガラクツロナン / 水和 / ビニルエーテル結合 |
研究概要 |
細菌における植物細胞壁分解機構に関する研究は、植物細胞壁多糖に対する細菌の分子応答機構を明らかにし、未利用バイオマスの有効利用や植物の細菌感染症予防に繋がることが期待される。本研究では、植物細胞壁ペクチンの構成成分であるラムノガラクツロナン(RG)の分解に関わる枯草菌由来酵素[不飽和ガラクツロニルヒドロラーゼ(YteR)]に焦点を当て、その構造と機能を解析した。 YteRはα6/α6-バレル構造を基本骨格とし、そのバレルの中心には大きなポケットが存在する。本酵素の構造と機能との相関を明らかにするため、YteR不活性変異体(D143N)を作製し、その基質(ΔGalA-Rha)との複合体の高次構造をX線結晶構造解析により決定した。基質は、バレル中心に位置するポケット部位に結合していた。複合体の構造解析と部位特的変異体を用いた速度論的解析により、YteRの反応機構を提唱した。Asp143が、一般酸触媒としてΔGalAの二重結合(C4=C5)のC4炭素に水素を供与する。次に、Asp143が、一般塩基触媒として水分子から水素を受け取る。脱プロトン化した水分子は、ΔGalAのC5炭素を求核攻撃する。従って、反応は、グリコシド結合ではなく、二重結合(ビニルーエーテル基)を水和することにより開始される。この水和により、ヘミケタールが生成される。ヘミケタールは不安定であり、直ちにヘミアセタールとなる。ヘミアセタールは、アルデヒドとの平衡によりグリコシド結合が切断され、アルデヒド(ΔGalA)と遊離の糖となる。以上のことから、YteRは既に明らかにした不飽和グルクロニルヒドロラーゼと同一の反応機構を示すことが明らかになった。これは、不飽和糖質に作用する酵素に共通する反応機構と考えられる。
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