研究課題/領域番号 |
18031020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 耕一郎 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (90212034)
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研究分担者 |
永井 正也 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (30343239)
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キーワード | テラヘルツ / 誘電率 / 局所電場効果 / 水和水分子 / 生体分子 / 水 / 時間領域分光 / 全反射減衰法 |
研究概要 |
水溶液中のバルクの水分子が減少したかのように振る舞う。このことからTHz領域の誘電率測定から水和水分子の個数およびその誘電応答を評価する手法を確立した。溶質試料として様々な濃度のアミノ酸(アラニン、アルギニン)、2糖類(スクロース、トレハロース)の水溶液を測定した。その結果、水溶液の溶質分子の密度を高くしても誘電率の実部は大きな変化をもたらさないものの、虚部は密度とともに減少した。これらの誘電率から水和水に関する情報を定量的に求めるために、Onsagerの局所電場理論を用いた。水溶液の複素誘電率はバルク水、水和水、溶質分子の3成分の分極率和で与えられるとして定式化した。そしてこの式を用いて測定で得られた分散関係を最小二乗法でフィッティングした。パラメータは水和数、水和水分子を球とし見なしたときの半径、溶質の分極率の3つである。また水和水および溶質分子はGHzよりも長い緩和時間を持つと仮定して水和水と溶質の配向分極率をゼロとした。 ショ糖を例としてあげると、解析で得られた水和水は12.8個であり、超音波を用いた実験結果の13.9個と近い値を示している。また水和水の半径はバルク水の半径の0.81倍であり、この半径は溶質分子の種類によらないことを見いだした。水和水の半径が小さいということは水和水の密度がバルク水の密度よりも高い(1.9倍)ということを示しており、他の実験結果と整合する。 これらの解析では密度依存性、溶質分子依存性を検討した結果、バルク水においてテラヘルツ領域に見られる緩和成分は水和されても残っていることを見いだした。この成分は水においてもその起源が不確定であり、THzの成分に対する新たな知見を与えるものと考える。
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