研究概要 |
本研究は、若年性痴呆症の病原蛋白質であるニューロセルピンと、ポリマー化しないセルピンであるオボアルブミンをモデル蛋白質とし、「セルピンは何故準安定状態にfoldし、そしてどのような構造がポリマーを引き起こすのか?」を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の成果を得た。 1.病原性ニューロセルピン変異体の緒性質と発症年齢との関係の解明:ニューロセルピンには、現在4種類の病原性変異体S49P,S52r,H338R,G392Eが知られており、平均発症年齢はそれぞれ48,24,15,13才である。それぞれの変異体の緒性質を調べた結果、ポリマー化速度はG392E>H338R>S52R>S49Pの順に速く、発症年齢と相関があったが、Tm値は野生型=56.3℃,S49P=49.9℃,S52R=55.1℃,G392E=52.8℃で、熱安定性と発症年齢に相関は無かった。 2.Refolding中間体の構造解析:病原性ニューロセルピン変異体のRefolding経路を調べた結果、Refolding開始後4ミリ秒以内に二次構造が50%程度回復した中間体を形成し、その後数分かけてゆっくりとNative構造にまでfoldする二段階の反応であることが明らかとなった。また、pH2のRefolding bufferを使用すると、中間体でRefoldingが停止することが明らかとなった。この点に着目し、中間体の構造解析を行ったところ、病原性変異体の中間体は、野生型のNative型や中間体よりも□-ヘリックスの占める割合が高かった。また、中間体のペプシン消化産物を逆相HPLCにより分析し、ペプチドマッピングを行った結果、ポリマー化反応の鍵となるシャッタードメイン背面の□-ターン構造の部分が、病原性変異体の中間体では□-ヘリックス構造を取っている事を示唆するデータを得た。更に、中間体からNative状態までのRefolding速度は、野生型>S49P>S52R>G392Eの順に速いことも明らかとなった。
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