研究課題/領域番号 |
18031036
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
池口 雅道 創価大学, 工学部, 教授 (00192477)
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研究分担者 |
藤原 和夫 創価大学, 工学部, 講師 (90409780)
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キーワード | βラクトグロブリン / ペプチド / モルテン・グロビュール / フォールディング / 二次構造 / ヘリックス / 部特異的変異 / 疎水相互作用 |
研究概要 |
蛋白質のフォールディング初期に蓄積するモルテン・グロビュール(MG)構造の安定化には疎水相互作用が重要であることが知られている。その相互作用の範囲や特異性を明らかにするため、ウマβラクトグロブリン(ELG)を用いて研究を行なった。 ELGは酸性pHでMG状態をとる。この状態は温度を下げると鎖状で広がった分子形態を持ちながらもヘリックス含量の増加した状態(C状態)へと変化する。同じようなヘリックス含量の増加はELGが持つ2つのジスルフィド結合の1つを欠損した変異体において、低塩濃度条件で静電反発により分子を拡張することによっても観測されている。これらの現象はMG状態のコンパクトな分子形態と二次構造の少なくとも一部(βシート)は疎水相互作用によって安定化されており、分子が拡張するとともに局所的な二次構造形成傾向が優位となりヘリックス構造へと変化するものと解釈できた。そこで、この仮説を検証するために、ELGのMG状態およびC状態でヘリックスを形成している領域に相当するペプチド・フラグメントをいくつか作製し、これらフラグメントにヘリックス構造が形成されるか否かを調べた結果、ペプチドはいずれもヘリックスを形成しなかった。さらに、ELGのMG状態とC状態において二次構造の存在が示唆された領域全て(55残基)を包含するフラグメントCHIBLを大腸菌で発現させた。プロリンに置換実験の結果、CHIBLの二次構造はC状態のそれに近いものであると考えられた。先に述べた短いペプチドの結果とも併せると、CHIBLに見られるヘリックスは各ヘリックス単位内の相互作用では十分に安定化しないが、CHIBL領域の相互作用で形成されると考えられる。また、CHIBLは温度変化や塩濃度の変化によってもMG様の構造に変化しないことから、MG状態の構造はCHIBL配列以外の配列を必要とすることが明らかとなった。
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