研究課題
我々は、タンパク質の二次構造、とりわけヘリックスやストランド同士を結ぶターン構造が形成される過程に注目して研究を行っている。そのために短いペプチド分子の分子シミュレーションを行い、構造変化を観察している。具体的には、protein GのB1ドメインのC末端側の16残基のβ-ヘアピンに相当するペプチド(G-peptide)のβシート形成とターン形成を、G-peptideとその部分配列ペプチドの水中での分子シミュレーションによって研究した。G-peptideは天然に存在するタンパク質の部分配列ペプチドでありながら、水中で天然構造に類似のβ-ヘアピン構造をとることが実験的に示されている。今年度の研究の進展を次に記述する。(1)ターン部位のアミノ酸配列のみを含む短いペプチドの立体構造の分布:実験事実によると、疎水的な残基を欠く(ターン部位を含む)短いペプチドは、天然構造へ折れ畳むことができない。このことがシミュレーションで再現されることを確認するために、ターン部位の6残基(アミノ酸配列:DDATKT)のみを含む短いペプチドの拡張アンサンブルシミュレーションを行い、水中でどのような構造をとるかを調べた。(2)ターン部位部分配列ペプチドの構造の分布の力場依存:DDATKT配列と、3残基からなる部分配列ペプチドが水中でとりうる構造を、複数の異なる力場を用いたシミュレーション結果を比較することによって検討した。計算結果は、正しいターン構造の形成されやすさの違いが、ペプチドの構造空間サンプリングの結果の力場依存性をもたらすという考えを支持するものだった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Proteins : Structure, Function, and Bioinformatics 66・4
ページ: 846-859
Biochemistry 45・39
ページ: 11752-11761