研究概要 |
1.Ala残基を多く含むAK型ペプチドは、加圧よりヘリックス構造が増加する。この原因として、Ala残基のCO基が溶媒である水との水素結合にあると考えられている。AKペプチドのアミドIバンドの低波数シフトもこの水和が原因と考えられている。水和と波数シフトとの関係を明らかにするために、N-methylacetamide2量体-水系のDFT計算(B3LYP/6-31G++(d,p)レベル)を行った。アミドIモードは1652cm^<-1>と1700cm^<-1>に強い赤外活性を与えた。前者は水素結合により大きく低波数シフトし、水素結合距離を短くする(加圧することに相当)とより低波数シフトを示した。これらの結果は高圧赤外実験と一致した。 2.AK型ペプチドとコイルドコイル構造をもつGCN4-Plは、加圧に伴いヘリックス構造が安定化する。ペプチドとタンパク質での圧力挙動の違いを明らかにするために、α/β型のペプチドである・Croをモデル系とした。2次構造変化の追跡には赤外アミドIモードを用いた。天然配列、デノボ配列・Croはともに高圧下でunfoldしたが、興味深い違いも示した。βシートのunfold圧力はデノボ配列で約250MPa、天然配列で約330MPaであったが、ヘリックスの変性圧力はデノボで約670MPa、天然配列で約390MPaとなった。デノボではヘリックスの圧力安定性が著しく増した。 3.シニョリンは人工配列ではあるが、熱変性において協同的変性を示すことが確認されているβヘアピンペプチドである。ヘリックスの場合との比較を目的に、高圧下の赤外分光実験を行った。アミドI赤外スペクトルは、典型的なβ構造の特徴を示し、加圧に伴いβのピークは減少した。ピーク強度の圧力依存性から、変性圧力は約200MPa、変性に伴う体積変化は-21cm^3/molと見積もられた。
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