研究概要 |
1.ニワトリリゾチームのSS結合欠損変異体(OSS体)はほとんど高次構造をもたず、自然に変性した状態にあるが、酸性条件下でのNaCl添加によりプロトフィブリルを形成する(J.Mol.Biol.349,916-921,2005)。AFM像の解析からプロトフィブリルの線維数は長さに対してほぼ指数関数的に分布すること明らかとなった。この結果は、プロトフィブリルの成長は、線維の成長端にモノマーが常に一定の親和力で付着するLinear polymerization mechanismによることを示した(ref.5)。 2.プロトフィブリルの圧力解離キネティックスを高圧NMR及び高圧蛍光を用いて研究した。高圧蛍光測定の結果から線維末端から1分子が解離する速度を、例えば2000気圧で3.1s^<-1>程度と見積もることができた。 3.プロトフィブリルの圧力解離の速度は印加圧力とともに増大するが、3500-4000気圧でほぼ一定値に達する。これらの結果、活性化体積は1気圧では-50.5+/-1.60ml mol^<-1>で負あるが、圧力とともに増大し、3500-4000気圧でほぼゼロになる。活性化圧縮率は全圧力範囲で大きな負の値(-0.013+/-0.001 ml mol^<-1> bar^<-1>)を示すことから、活性化状態はプロトフィブリルの水和を伴うことを示唆している。また負の活性化圧縮率は、プロトフィブリル状態での圧縮率がモノマー状態のそれよりも大きいことを示している。 4.結論として、ニワトリリゾチームのOSS体からなるプロトフィブリルは、体積及び圧縮率ともに大きく、キャビティーが大きく揺らぎが大きい。プロトフィブリルの解離にはキャビティー等への水和を伴う揺らぎが特に重要であると結論される(Biophys.J.92,323-329,2007)。これより水和とともにゆらぐアミロイドプロトフィブリルの実態が明らかになってきた。
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