研究課題
アミロイド線維の一般的な形成過程は「核形成」と「伸長」の二段階からなり、異なる蛋白質がアミロイド形成の核になることもある(cross-seeding)。そこで、本課題では、神経変性疾患に関わる各種蛋白質のcross-seedingによるアミロイド線維化過程を検討することを目的とする。本年度は、ハンチントン病の原因蛋白質であるポリグルタミン(poly-Q)に着目し、cross-seedingによるpolyQ線維形成機構を検討した。細胞が各種ストレスを受けると、TIA-1蛋白質がmRNAやリボソームを巻き込みstress granuleと呼ばれる顆粒状構造物を核や細胞質に形成する。そこで、培養細胞内においてTIA-1がpoly-Q凝集体と共局在することを確認し、poly-QとTIA-1の相互作用が生理的条件下でも起こりうることを明らかにした。次に、TIA-1においてstress granule形成に必須のC末端ドメイン(TIA-1^C)は凝集しやすいことが分かった。TIA-1^C凝集体はThioflavin Tの蛍光を増加させ、Congo redの吸収スペクトルを長波長側にシフトさせた。これらはアミロイド様線維形成を示す特徴的な変化であり、TIA-1^C凝集体を原子間力顕微鏡により観察すると直径約10nmの線維状形態を有していることが明らかとなった。そこで、poly-Qを含む溶液にTIA-1^Cアミロイドを加えcross-seedingを検討したものの、poly-Qの線維化に大きな速度論的変化は見られなかった。一方、poly-Qからなる線維状凝集物はTIA-1^Cのアミロイド化を加速することが分かった。よって、poly-Q凝集体がcross-seedingによりTIA-1などの蛋白質凝集化を促進し、それらの機能低下が細胞毒性の発揮につながる可能性を示すことができた。
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すべて 雑誌論文 (3件)
Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 103
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