最近我々はStreptomyces Iasaliensisが生産する強力な抗腫瘍性活性を示すペプチド系抗生物質エキノマイシン(Ecm)を標的分子として選択し、エキノマイシンの生合成遺伝子クラスターの同定、全生合成遺伝子の大腸菌での発現および酵素的全合成に成功した。今回非リボソーム依存性ポリペプチド合成酵素(NRPS)を用いたコンビナトリアル合成の可能性を探る一環として、エキノマイシンのチオエステラーゼ(Ecm-TE)ドメインを用いた誘導体合成を検討した。Ecm-TEは分子量約30kDaと比較的小さなタンパクである。Ecm-TEを導入したプラスミドで形質転換した大腸菌E.coliで大量発現を行ったところ、収量7-8mg/Lと良好な発現系を確立することに成功した。次いで固相合成法により、クロモフォアとしてquinoxaline環を有するテトラペプチド二量体のN-acetylcysteamine誘導体を種々合成した。最終的にラクトン化に必須なSerを除く3種のアミノ酸を入れ換えた9種の誘導体を合成し、リコンビナントEcm-TEを用いた酵素反応に供したところ、すべての置換体が環化生成物を与えることを見出した。この際、マクロラクトン化と同時に加水分解が進行したため、これを抑制する目的で合成DNAを添加したところ、加水分解は顕著に減少し、環化生成物を主生成物として得ることに成功した。
|