細胞情報伝達系の一つである脂質シグナリングは、その多くが膜蛋白質を介して機能を発現するため、現在頻繁に用いられる機能解析法が適用できない場合があり、新規解析法の確立が望まれている。蛋白質との親和性を解析の基礎とする光アフィニティーラベル法はこの問題解決に有用な手法の一つとなりうる。糖脂質セラミド部は、構造上脂肪酸と長鎖塩基からなり各々の炭素鎖長による生理活性の変化も報告され、基質認識システムの解明が大きな課題となっている。今回の申請において、脂肪酸、長鎖塩基に対する取り扱い容易な安定同位体標識光反応性誘導体の短工程合成の確立、およびそれらを用いたセラミド骨格を構築し、その性質を検討することで、効率的膜蛋白質機能解析法の確立を目指し実験を行った。 光反応性基と用いられるジアジリンは光有機化学的にジアゾ体への異性化が副反応として起こりラベル収率の低下の原因になると考えられてきた。この理論が実際の生体混合系機能解析における低濃度(1mM以下)において起きうるかを検討したところ、この異性化はラベル収率を引き起こすことはほとんどなく、蛋白質の光ラベルにおいてそれほど考慮する必要がないことが明らかとなった。
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