研究概要 |
フェノキサゾン環をリンカー構造に含む、バンコマイシン2量体の合成を進めた。 糖部結合2量体について、マウスを用いたin vivoでの治療効果を評価した。リンカー鎖長の短い誘導体(D-08)は、PRSPによる肺感染モデルで優れた治療効果を示した。リンカー結合位置をバンコマイシンペプチド鎖C末端に変更した新規フェノキサゾン型2量体を合成し、上記の糖部結合2量体と生物活性を比較した。両者は何れもバクテリア(S.aureus, VRE)の細胞壁合成を阻害することがわかった。ところが、酵素レベルでの合成阻害の強さと、菌体レベルでの抗菌活性(MIC)の間に相関が見られないことが判明した。従来、2量体においては、エントロピー効果による薬剤と細胞壁中間体との強い相互作用が仮定されてきたが、今回の結果は従来の単純なモデルの限界を示唆するものと考えられる。 いずれにしても、リンカー結合位置にかかわらず耐性菌に対する抗菌活性が見られるので、実際には両者に共通する活性配座がある可能性も考えられる。そこで、バンコマイシン2分子のバンコサミン末端間、C末端間にそれぞれ架橋した環状のバンコマイシン2量体を合成した。今後は、その抗菌活性や作用機序について解析する予定である。 一方、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌に抗菌活性を有する天然物ケンドマイシンの合成を進めた。閉環メタセシス反応を基盤とする合成経路について、中間報告を論文発表した。今後は別経路による全合成と、作用点の解明を進めて行く予定である。
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