研究概要 |
アマンタジンを始めとするアダマンタンアミン類がNMDA受容体アンタゴニスト活性にもとづく多様な中枢神経活性を有することから、アダマンタン核上を精密修飾したアダマンタン誘導体が有用な中枢神経活性を示すものと期待し研究を行ってきた。研究開始当初は、アダマンタン核上にグルタミン酸単位を配置したアダマンタン誘導体が有用な中枢神経活性を示すものと期待していたが、前年度の研究において必ずしもアダマンタン核上にグルタミン酸単位を持たなくとも精密修飾アダマンタン類は、中枢神経活性を示すという結果が得られた。この結果を受けて前年度は、アダマンタン誘導体を約40種類合成し、CaMキナーゼIIの活性化を指標として中枢神経活性評価を行ない、中枢神経活性を示唆する約10種の化合物を候補化合物を得た。そこで、本年度の研究では、より生体内条件に近い灌流条件によるアッセイ系を確立し、合成した約40種のアダマンタン誘導体の薬理活性評価を再度行った。その結果、5μMにおいてCaMKIIの自己リン酸化を亢進する化合物ad008,ad013,ad014と抑制する化合物ad003,ad004,ad005が得られた。さらに作用の強かったad013,ad014を用いてラット海馬切片を用いた電気生理学的手法によって詳細に検討を行った結果、これらの化合物は単独でfEPSPを亢進することがわかった。この結果から、これらの化合物はNMDA受容体にアゴニスティックに作用していることが示唆された。Ad013とad014はエナンチオマーであり、作用の違いはほとんどない点でも興味深いが、現在のところ空間的な官能基配置がこれらの化合物では類似しているためであると考えている。
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