研究概要 |
イオンチャンネル型グルタミン酸受容体は、シナプス後細胞の膜上に存在し、グルタミン酸を受容すると自身で形成するイオンチャンネルを開口し陽イオンを透過することで、速い興奮性のシグナル伝達を担う重要なタンパク質である。 今年度は、ダイシハーベイン、ネオダイシハーベインという二種類の天然物とイオンチャンネル型グルタミン酸受容体GluR5のリガンド結合ドメインとの複合体の結晶構造解析を行った。それに先立ち、本来のリガンドであるグルタミン酸との複合体の結晶構造解析も行った。ダイシハーベン、ネオダイシハーベイン複合体の構造は、それぞれ1.6,1.8Å分解能で解析され、8位の置換基の違いまではっきりと区別できた。結合様式は、ほぼ同じであり、結合に関与するアミノ酸の位置なども一致していた。ただ、周囲のアミノ酸の側鎖の位置がわずかに変わっているところもあり、この天然物二種類の親和性の違いにも関係していることが示唆される。これら二種類の天然物は、リガンド結合ドメインを形成するタンパク質部分と直接の水素結合・疎水性相互作用をし、高い親和性を実現している。また、グルタミン酸結合型は2.0Å分解能で解析されたが、ダイシハーベイン類複合体と比較すると、S1とS2という二つのドメインの間隔が狭いことが明らかになった。この違いが、シグナル伝達の強弱と関係していることも考察できた。グルタミン酸は多くの水分子に囲まれ、間接的な水素結合でリガンド結合ドメインに結合していることが明らかになった。
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