研究概要 |
未開拓乾燥地の生物資源を探索源とし、多元的スクリーニング系を用いて新規機能性物質の探索を行い、生活習慣病の予防薬や治療薬への開発を目的として探索研究を行った結果、中国や北アフリカの乾燥地由来生物資源から、神経細胞保護作用、抗アレルギー活性、細胞分化誘導活性等を見出したので報告する。 チュニジア原産の7種類のオリーブオイルおよび葉の抽出物に、ヒト白血病細胞(HL-60)、ヒト乳がん細胞(MCF-7)、ヒト大腸がん細胞(Caco-2)に対する有意な細胞増殖阻害が認められた。その内の3種には、HL-60の細胞分化を誘導し、好中球活性である非特異性エステラーゼ活性およびNBT還元能を有することを見出した。また、好塩基球細胞(RBL-2H3)を用いた抗I型アレルギー活性において、2種類のオリーブオイルに有意な活性が認められた。ヒト好塩基球性白血病細胞(KU812)を用いた実験において、これらのオリーブオイルには炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子TNF-αとインターロイキンIL-4の発現抑制効果があることを新たに発見した。 中国ウイグル自治区に自生する乾燥地寄生植物Cistanche tubulosa(管花地精)より、cistanoside Aを含む3種のフェニルエタノイド配糖体を分離・同定した。これらの化合物には抗I型アレルギー作用が認められ、構造と活性に相関のあることを見出した。 さらに、寄生植物アメリカネナシカズラより単離し、コーヒー等にも含まれている3,5-di-O-caffeoylquinic acid等のカフェオイルキナ酸に、アルツハイマー症毒素アミロイドβに対する神経細胞保護作用のあることを見出した。そこでプロテオミクス手法を用いて解析した結果、カフェオイルキナ酸処理により、パーキンソン病、細胞毒や低酸素から神経細胞を保護するタンバク質PGK1(Phosphoglycerate kinase 1)の発現が著しく増加することを見出した。
|