研究概要 |
1.これまで検討してきたイミニウムカチオンに対するフランの求核的環化反応(フラン-イミニウムカチオン環化反応)について基礎的研究を行ったところ、多くの基質について反応は高い位置及び立体選択性を保持しながら進行する事が判明した。本反応を利用して、高度に官能基化されたマンザミンAのABC環システムの構築に成功した(Org. Lett.,2006)。さらに本反応を鍵段階としてラセミ体イルシナールAの全合成に成功した(論文作成中)。現在、光学活性マンザミンAの全合成を検討中である。 2.マンザミンBはマンザミンA同様、海洋産海綿動物から単離されたβ-カルボリンアルカロイドであるがこれまで、部分合成の報告すらない。全ての炭素が不斉中心となっているシクロヘキサン環(B環)の構築に加え、シス二重結合を有する11及び13員環アザサイクルの構築は有機合成上challengingな天然物である。我々はアミノジエンを用いる不斉Diels-Alder反応を利用し光学活性AB環システムの構築に成功した。さらにDiels-Alder付加体を分子内アセタールに誘導する事により、立体化学を制御し14位に相当する4置換不斉中心の構築に成功した。一方、閉環メタセシスを用いる11員環形成を検討し、閉環体を得ることに成功した。その際、(E)及び(2)-二重結合の生成が確認され、選択性が反応点より遠いB環上官能基により影響される事を見いだした(Tet. Lett.2007)。現在、マンザミンBの全合成に向けて検討中である。
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