研究概要 |
当研究室独自に構築した未利用天然物ライブラリーを用いて,疾患関連シグナル伝達分子を標的とした天然物探索研究を行った.その中から,本年度の研究成果を以下に記す. 1.タイ産東北部産のショウガ科植物Curcuma parvifloraより単離した一連の新規セスキテルペン二量体成分は,各種培養腫瘍細胞に対する増殖抑制活性を示した.主成分parviflorene Fについてウェスタンブロット法を用いた解析により,本化合物はアポトーシスに関与するデスレセプターの一つであるDR5の発現量を有意に上昇させ,またカスパーゼ-8および-3を活性化させることが明らかとなった.さらにアネキシンV染色により,本化合物によるアポトーシス誘導を確認した.従って,Parviflorene Fはデスレセプター経路を介してアポトーシスを誘導することが示唆された.一方,DR5の発現を誘導する天然物の探索のために,DR5プロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだ安定形質転換細胞株DLD-1/SacIを用いたスクリーニングを行った.その結果,ショウガ科植物Catimbium speciosumより数種のフラボノイド類を活性成分として単離した. 2.大腸癌や肝癌などではWnt/β-cateninシグナル経路の異常亢進が引き起こされている.そこで,この経路を制御する天然物の探索を目的にβ-catenin/TCF転写阻害活性を指標としたスクリーニングを行った.TCF/LEF結合領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだ安定形質転換細胞株293T/STFを用いたスクリーニングより,当研究室の天然物化合物ライブラリーのの中から,変形菌Lycogala epidendrumの子実体より単離したlycogarubin Bが40μMでβ-catenin/TCF転写活性を86%阻害することを見いだした.
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